2021年頃から建設費の暴騰が続いておりますが、今後どうなるのでしょうか?
まだ何処も報じていない最新の動向から予測を、建設業の最前線で、CM方式で、
首都圏の多数のマンション物件の原価から見積をしている㈱土地活用の代表が、書いていきます。
まずは、建築費指数です。建設物価調査会が出している数値です。
流石に上げすぎでしょう。もう至る所で、言われていますが、コロナショックからの景気回復や、ウクライナ戦争による原油、材木などの資源高に加えて、
職人の高齢化など、労働需給の逼迫が原因です。
それに加えて、2024年は4月から働き方改革によって、土曜日が現場を動かしにくくなるので、工期が概ね2カ月程大目に求められて、
その期間の管理系費用(現場監督のお給料や、現場事務所の家賃等)が建設費の値上がりにも加算されます。
しかし、下記図の、日本の消費者物価指数CPIの総合の上昇が、2021年から比べて、5.6%程度の上昇に対して、インフレ社会と言えども、30%近くの建設費上昇は、過剰な上昇と思われ、建設業界においては、かなりの部分が建材メーカーの値上げ、下請専門工事会社や職人側も含めた便乗値上げが含まれていると思われます。
清水建設など、スーパーゼネコンですら、赤字発表していますし、下からの突き上げが酷すぎて、ゼネコン側が儲かっている訳では全く無く、原価の値上がりに手を焼いている立場では有りますが、このような値上げは他の業界では、消費者から中々認められることは無いでしょう。
建設業界は、悪い癖なのか、景気が良いと思うと、後先考えずに稼げるうちに稼いでしまおうと、需要を先食いしながら、一方的に値上げをしてくる傾向が強いです。
お金が沢山欲しいという気持ちは解らなくも無いですが、まだまだ上げても行ける、まだ上げても行けると、バブルに乗って値上げしてしまうと、
建築主は、何処かで採算的に限界を迎え、建て控えが起こります。
それが今だと考えられます。
都心部は、賃料も値上がりしていますが、全業種の労働賃金の上昇幅に比べて、賃料の値上げにも限界があり、
建築主側の採算が合わなくなることは自明のことです。
建築主側は儲からなければ建てないなんてことは、当たり前のことですよね。
それでは、統計データから、今後の建設費が、どのようになっていくか考察していきましょう。
下記は、東京の、RC造、SRC造の着工面積の合計です。国土交通省から毎月末に出されているデータを抽出しエクセルでグラブ可しているものです。
前3カ月合計というのは、統計の発表月から前の3カ月の合計をグラブ可したもので、前6カ月合計は、発表月から前の6カ月を合算したもので、各月の統計データですと、デッコミ引っ込みが、荒く解りずらいのですが、数カ月を合算すると、より傾向が解りやすくなります。
東京のRC系の着工面積は、2023年3月時点の前3カ月合計201万㎡をピークに、
2023年11月では前3カ月合計98万㎡まで減少を続けています。1/2程度ですよね。
3カ月で201万㎡は、今の、建設業の供給能力に対して明らかに過剰では有りますが、
3カ月合計で100万㎡を程度で推移し続けると、世の中は、どうなるでしょうか?
建設費は暴騰している中で、『何かが、オカシイ。』
そう感じる人は、今の日本に、どれだけいるでしょうか?
建設業界は、景気に遅効性で建築主が建設することを決定した後、図面を作成し、見積、着工と、暫くは、仕事があるため、大半の建設業者(ゼネコン、下請専門工事会社、職人)は、まだ気が付いてはいないかも知れませんが、統計上、東京では、既に以後の仕事量は、薄くなってきています。
一方で、神奈川、千葉、埼玉などが、2024年10月頃に、場所的な実力が伴っていない着工面積の上昇を示していますが、
首都圏では、地価の上昇などで建設がしずらくなったディベロッパー等が、ドーナツ化で、東京通勤圏内などに、
大規模分譲などを移ししている可能性と、大規模公共事業等の影響と思われます。
私が独立直前の2008年当時1年ほど勤務していたディベロッパーも、それまで都心でワンルームマンション用地ばかり狙って開発していたのに、
血迷って、埼玉の僻地で、大型のファミリーマンションをリーマンショック直前に建てていました(竣工時期にリーマンショックに突入し全く売れずに大苦戦してました。)し、当時も瞬間的なドーナツ化は、感覚的(統計的な資料は無いです)に起こっていましたが、東京の下落に引きずられる形で、
神奈川・千葉などの着工面積も今後減少してくことになると思われます(私の学生の頃、1980年代のバブルでドーナツ化が起こったと習った気がします。)。
景気が悪くなった時に、売れるのはやっぱり東京だと、当時は痛いほど痛感したものです。
下記が、東京・神奈川・千葉・埼玉の首都圏のRC造とSRC造の3カ月合計の着工面積の推移です。
首都圏全体では、昨秋は、東京は、減少し、神奈川、千葉、埼玉で、上昇してたため、まだ僅かな低迷で済んでいますが、今後、首都圏(東京、神奈川、千葉、埼玉)全体の着工面積が大きく下落に向かうかは、今後、数カ月の着工統計の注視が必要となります。
労働需給に関しても、国土交通省の労働需給調査のデータを纏めたものが下記ですが、
関東の型枠の労働需給は、2023年9月の10.9ポイントをピークに、昨年12月のデータでは0.6ポイントと、落ち着いてきて、また1月に若干の上昇を示してはいますが、これは着工情勢を見る限り、昨秋の型枠工不足による工事の遅れを取り返そうとするなどでの紛れでしょう。
鉄筋工に関しては、最近は、大きな労働需給の逼迫は無く、僅かな+で推移しています。
労働需給から見るに、2023年1-3月の着工参入された物件の躯体工事の最盛期が2023年9月と思われ、その受注残を工事をしながら食いつぶして、且つ、神奈川、千葉、埼玉で、一時的な増加で労働需給の極端な上昇を招きましたが、東京の新規着工案件は薄くなりつるある状態です。
昨秋の一時的な労働需給ひっ迫を肌感覚で感じた、首都圏の型枠業者は昨年末、一斉に強気に出て、㎡5000円台だった単価を、
建築主のスケージュールに併せて着工しなければならないゼネコンなど発注側の脚元を見るように、
均した施工坪単価を『7-8000円だったらやってあげても良いですよ。』のように相当強気に言ってきていましたし、ゼネコン側も手を焼いていましたが、
そこが瞬間的なピークであったと数か月後に気が付くことになるでしょう。
あと数カ月もたてば、『今は、高くてもしょうがないから。』と、お願いして型枠職人を確保して貰っていた発注者であるゼネコンと、需給関係性が逆転して来る頃と思います。
建材も含めて、これまでは、多くの建築主やゼネコン側も、インフレ社会だから、やむなしと値上げを認めてきましたが、今後、数カ月で、既に着工減に気が付いているスーパーゼネコン等、大手建設業ほど、下請業者側からの値上げに関して、首を縦に振ることは減っていくことになると思われます。
大手は何千人、何万人も社員がいるのですから、私が仕事の片手間に取っているデータ位は中枢部は、把握はしているとは思います。
次に、建設業から視点をあげて、マクロな経済指標を見ていきましょう。
日本の、企業物価指数は、昨年までは酷い状況でしたが、今は安定してきていますし、鉱工業生産指数は脱コロナが終わり低迷し始めています。
世界経済の方に目を向けると、ユーロ圏や、ヨーロッパ―の雄、ドイツは様々な経済指標をみても、景気が悪化(PMIは50が平均)しております。
ウクライナ戦争によるロシアからエネルギーの供給遮断等が効いているんだと思います。
中国経済も、統計自体が怪しいですが、若者の失業率の高さや、不動産ディベロッパーのゾンビ経営(一部破産)など、
景気悪化は、さまざまなニュースで取りざたされています。中国の生産者物価指数PPIは、もはやデフレですね。
フーシ派によるボスボラス海峡の封鎖などによるヨーロッパへの輸送賃増加によるインフレ懸念も無くはないですが、
ユーロ圏経済は、既に低迷しており、更に原油などの物資輸送が滞れば、破滅レベルに大打撃になると思います。
バイデン政権も、極左の意見に則り、環境問題を盾に、LNGの新規輸出に制限を掛ける発表をしており、
ロシアからのガス輸入が滞っているドイツを中心としたユーロ圏内の経済にトドメを指す可能性が有ります。
アメリカの逆イールド解消が、あと数カ月後に迫りますが、金融、不動産セクターの、指標に怪しさが満点であり、
ソフトランディングするという期待を下回り、2024年後半は、既に低迷しているユーロ圏や中国に、トドメを刺すほど、全世界的な経済危機が起こるのではないかと思っております。
アメリカの逆イールドの長さは、歴史的なものであり、まだ多くは無いものの、その解消直後の景気悪化の危険性が複数の媒体で取り上げられております(検索して頂ければと思います。)。
『それでも大丈夫!まだまだ日本もアメリカも株高じゃないか!ソフトランディングする!』と思っている方は、こちらのYouTube番組は、若干煽り気味ですが、最新の世界経済の動向は、レバナス一本リーマンさんのYouTube発信は、発注者側は、追っていく価値が有るとは思います。
当社は、現時点で、お客様に概算見積を頼まれた場合に、一応は、実際に見積をする数か月後の時期に、後で予算が足りないとなると面倒なので、
更なる上昇を見込んで、融資枠確保のため高めに出さざるを得ないですが、
感覚的には、2008年9月リーマンショック直前の2006年-2008年前半頃と同じ匂いがプンプンしています。
当時は、2008年の北京オリンピック開催で鋼材を中心とした資材価格が上がっていると出した見積の期限を2週間単位などで切って、
大騒ぎしながら、ファンドバブルで好調だった不動産業界に牽引されて建設費はバンバン上がっていきました。
当時は、鉄筋工の労働需給も+30ポイント近くをつけて、建築主側やゼネコンからみたら酷い状況では有りました。
あの頃も、2006年頃からサブプライムローンの危険性は新聞各社で、
取り上げられてはいましたが、建設・不動産業界は、意に介さず、バブって、イケイケどんどんで、
建設費も毎月のように暴騰していましたが、
懸念が半年から1年半足らずの間に、実際にリーマンショックとして起きて一気に、顕在可してきて、建設需要は崩れ去りました。
債券や証券化など経済の詳しい仕組みに関しては、私の専門外では有りますが、リーマンショックでは、
明らかに、世界の風向きが変わったと実体験をされた方は多いと思います。
2021年からの暴騰は、世界的な物価高の中である程度は、やむ負えないですが、
日本の建設費の上昇は、他の物価上昇率と大きな乖離が有り、建設需要の山は、労働需給の逼迫度合いを見ても、リーマンショック前よりは強くは無く、
その中で、建設費の暴騰が起こった状態です。
リーマンショック以後は、右肩上がりに回復してきた中で、建設費高騰をしている国内的な事情から、東京を発端に、着工面積を大きく減らしつつあります。
そして、リーマンショックから既に、16年の月日が流れています。そろそろ、膨張した世界経済の転換が起こっても不思議は有りません。
今後、アメリカ発で世界経済が大きく傾いていく可能性が高い中で、それが本格的な波として押し寄せた場合、どのように建設費は動いていくでしょうか。
世界経済の悪化に反して、日本の建設費だけ上がり続けることはあるのでしょうか?
2007年6月以降では、姉歯問題から改正建築基準法での取扱い指針の不手際から確認申請が半年近く通らないという問題も建設業界の足を引っ張りはしましたが、今は、大手エレベーター業者数社が、10階建以上のエレベーターの新規受注を2026年初旬工事分まで停止しているいう問題も、
ボディブローのように、建設着工面積の足を引っ張っていくでしょう。
東京のRC造の大型案件なんて、大半は10階建以上ですからね。
歴史は繰り返すのか。
その時、建築主は、どう動くのか。
私自身は、予算上は、まだ安くなることを見込んだ概算予測金額を出すまでには至っていませんが、
現状でも統計から何かがオカシイと感じており、
個人的には、現在の受注残が抜けきった今年2024年後半から建設費は下落に転じると思っています。
当社は、有難いことに、今年の秋ごろまで、CM方式での本見積を依頼をされている物件が大量にあります。
2025年にかけて何処迄落ちるのかは、神のみぞ知るというところです。
傾向を見極めるために、今後数カ月、着工指標、世界と日本の経済指標の注視が必要です。
『建設費は、まだまだ上がる!まだ認められるから、イケイケどんどんで高い見積出すぜー!』
と思っている方々は、私の記事が大外しした時は、鼻で笑ってください。
それでは、まだ気が向いたときに、記事にします。
2024/3/21追記:下記の動画を見て景気予測をご判断下さい。