今日は、「マンション建設の融資審査について」ということで、新築賃貸経営の融資審査の実情を赤裸々に書いていこうとお思います。
目次
マンション建設の融資審査について
常識的な融資審査目線
現状、「単独の土地を持つ地主様」の場合の、長期融資に関しては、地主様の実情(土地の保有状況や金融他資産、金融機関との取引状況)にもよりますが、ある大きな銀行では、概ね「表面利回りで9.0〜9.5%」ぐらい行かないと、自己資金を出さなければ、フルローンでの融資は否決される場合が多いですね。
この大きな銀行の融資目線は、投資家さんに融資が出ていたと言われている2010年~2015年ごろと、さほど変わっていないように思います。当時も、通らない物件は通らなかったですから。
建設費が安くても、利回りが低く採算性が無い計画の原因としては、
- エリア賃料が安すぎる
- 自己使用割合が大きすぎる
の2点です。
自己使用割合とは、オーナーの自宅や、事務所部分の面積当たりの割合が大きすぎれば、賃料収入で、自宅部分を建設する費用を支えることができなくなります。マンションの半分が自宅だったら、残りの半分から賃料収入があっても、採算性が悪くなりますよね。
土地活用において、建設費を削減することによって、長期に持続的な経営を支援したい、弊社とすれば、表面利回り9.0-9.5%付近の利回りが地主さんへのフルローン融資の目線であることは、常識的な金融機関として判断として、納得ですし、寧ろ賛同しています。
将来的に、目の前のオーナー様が、融資返済できずに、差し押さえられるような可能性のあるマンションを建設したくないですから。それは、幾ら、当社の利益に繋がる可能性があっても、引き受けたくない仕事です。建設のお手伝いをしてお客様が儲からないことを押し付けるようなことは、後ろめたく生き方として、面白くも何とも無いからです。
これからマンション建設を考える地主様は、こちら『究極の土地活用とマンション建設費とデットクロス』のブログ記事を是非とも熟読していただきたいです。
尚、『単独の』と書いているのは、複数の土地を持つ大地主様の場合は、利回りが多少悪くても、共担などを入れることにより融資は通るとの意味です。共担も全体の収益バランスとして、差し押さえられる可能性が無いのであれば、問題はないですが、建設する単独敷地で採算性が無いのであれば、潔く建設を諦め、コインパーキングや月極駐車場などで貸すべきだと考えます。
もちろんフルローンで否決される場合でも、自己資金を入れれば、建設は可能です。自己資金を入れれば、総事業費に対する返済額は減りますからね。要は金融機関が提携ローン無しで、求めているのは、持続的な安定経営です。
一方で、昔から12%ぐらいの表面利回りがあっても融資を出さない銀行は、もの凄い土地持ちの資産家さんなどではない場合、出さないです。これは、金融機関の姿勢によるものです。
この、地主様への融資目線に関しては、融資を出す銀行・信金が多少減っただけで、そんなに前から変わっていないとは思っています。
住宅金融支援機構は?
半公的機関の「住宅金融支援機構」は、融資総額は、若干緩い(金利は高い)ので、多くの土地活用営業会社が、持ち込んでいると聞いています。利回りが悪くても、融資が出ないと、建設できないですからね。
不動産ディベロッパーは?
不動産ディベロッパーに関しては、融資は2年~2.5年程度の短期融資で借入を起こして建設しますが、リーマンショックの時のように、そこまで融資が締っているようには当社のお客様に関しては感じておりません。リーマンショックような時でも、融資は出ない会社には出ない、出る会社には出るのです。
不動産投資家は?
不動産投資家さんにとっては、融資が厳しいと感じているのであれば、単に建設費が上がったのと、地価が上がっていて、原価があがることにより、相対的な利回りが下がっていることが原因でしょうね。融資方針が変わって、新規貸し出しを渋っている金融機関(信金の話は聞きますね)が出てきていることも確かではありますが。
金融機関も、利回りさえ良ければ、地主さん側の採算性が上がり、融資事故にはなりずらいので貸したいのは貸したいのです。
融資審査期間
融資審査期間は、書類提出から大体3週間程度ですね。流れとしては、担当者が事業収支を見て、支店で、本部審査に上がる感じです。事業収支を提出して、確実に通りそうな利回りの物件の時は、担当者も、ノリノリでフルローン行けますと言ってくださいますけど(笑)
営業会社の提携ローンの危険性
仮に、地主様で、表面利回り9.0-9.5%以下で、普通の金融機関でフルローンが出して、『高い建設費』で、建設しているのであれば、余程、地主様の属性(資産背景)が良いか、金融機関と施工会社(土地活用営業会社又はハウスメーカー)の提携関係が強いのでしょうね。
『じゃあ、提携ローンが強いから、高くても、そこで建てよう!』となるべきでは有りません。
当社も、沢山のオーナー様に、他社の事業収支を拝見させていただいてますが、『好立地に関わらず、こんな利回りで融資的にも建てられるのかな?』という内容で、地主様に提案しているので、提案してから、融資を通す自信があってやっていることなのか、単に、依頼を受けたから、融資が通るわけがないと解っていて、事業収支を出しているのか、良く解らない時があります。
オーナーさんに、『これで、融資通す気があるんですかね?』と聞いても、『多分、通ると思っているからやってるんじゃないのかなー(笑)』みたいな会話を笑いながらする時があります。
もしかしたら、提案しても融資が通らないことを確信犯的に理解して提出している物件もあるのかも知れませんが、仮に、7%程度の利回りで、建設させたら、将来的に返済が激しく、貯金を切り崩しまくらなければ、破綻するのが目に見えています。
下記に、弊社『土地活用HPのTOPページ』に掲載している「7%程度の利回りのキャッシュフロー(CF)」のグラフを再渇しますが、7.5%の表面利回りでは、右下の、紫色の棒グラフ(税引き後のCF)を見れば、15年後から、単年度赤字が始まります。
赤字の原因は、賃料の下落と、通常の不動産融資で使われている元利均等返済では、返済額は一定ですが、利息と元金の返済割合が経年毎に変わってきます。
リンク先の元利均等返済のグラフの意味を理解していない人が多くいますが、利息は、税金上の経費扱いにできますが、融資返済のゴール近くに行けば、経費算入できる利息部分が殆ど無くなり、支払う税金額(割合)が増えていってしまうのです。
支払う税金が増えていった結果、、、
融資返済額(一定)と、賃料下落のダブルパンチにより、手出しをして融資返済をしなければならない状況が起こります。
この事を理解しないで、何も考えずに、マンションを建設し、賃貸経営を開始する人が多すぎます。
多くの金融機関と、土地活用営業施工会社は、キックバックによる癒着構造にあると、下記の記事『土地活用 無料相談窓口と悪魔の囁き。何処に相談すれば良い?土地活用の豆知識⑮』でも書きましたが、仮に、低利回りで、フルローン融資が通っているのであれば、かなり危険な行為です。
他社が、常識的な、目線で審査されて、否決される可能性がある利回りを、うちの提携ローンなら融資を通せるなどと言っているのであれば、それは、危険行為であるという認識をまず、持つべきです。
㈱土地活用と金融機関の関係性
当社は、金融機関と強固な業務提携契約などを結んでいるわけではないですが、普段オーナー様をご紹介してる、大きな銀行の審査部からは、利回りが良いので評価は非常に高いとは聞いております。
悪魔の囁きの記事で理由を書きましたが、金融機関からの紹介は余程親しくさせていただいていた支店長様以外からは、基本的にないです。
当社から建設コストの3%近くをまたゼネコンの建設費に乗せさせて、金融機関にキックバックをさせるようなことは、仕組みとしてはできなくもないですが、心情的にしたくはないですから。
私が建設業で、コンストラクション・マネジメントを志したそもそもの理由が、談合やら、建設費に乗っけた、キックバックやら、そういう汚い仕事が大嫌いだからで、そういうことをしている会社と付き合わないというわけにはいきませんが、自分自身は、ただヒタスラにクリーンでありたいと思っています。
もちろん、オーナー様が元々お付き合いをしている金融機関から融資を受けるもよし、紹介するも良しです。融資審査書類として事業収支、プロジェクト工程、プロジェクト資金繰り表は、きっちりと作成させていただきます。
そして、融資さえ通れば、オーナー様の他の資産や収入など個人情報など、当社にとって全く必要が無いので、計画プランと融資審査書類を銀行提出書類として、お渡ししたのちは、金融機関を、ご紹介する場合においても、オーナー様を引き合わせた後は、オーナー様から直接金融機関に提出していただくことにしています。
そのため、私自身は、これまで建設した全てのオーナー様の計画マンション以外からの年収などは一切知りません。
年収幾らなんて、お見合いの時でも、本当は聞かれたくないですからね(笑)