土地活用の豆知識⑪バリューエンジニアリング・VE

今日は、土地活用をしている時に出てくる用語の紹介をしていきます。

建設費を調整する上で『バリューエンジニアリング(VE)という手法があります。現場で打ち合わせしている時など、良く出てくる言葉で、「VE=ブイ・イー」と呼びます。

英語で言うと大層なものに聞こえるかもしれませんが、建設業で行われているものを日本語で簡単に言うと「仕様調整」です。

バリューエンジニアリング・VE

念のためにお伝えしておきますが、株式会社土地活用のCM方式の中でのVE提案は、完全に無料のサービスです。

コスト削減率の中には、VEによるコスト削減は、含まれていません。CM方式で〇〇万円削減と書いているのは、完全に、同じ仕様で、交渉と専門工事会社による入替で建設費を削減した金額が書いてあります。

VEとは「同等の機能・品質の物で、安く施工できる方法があれば、そちらで施工する」
逆に「同じ価格のものであれば、より価値の高いもので施工する」という物です。

建築主の予算と合わなければ、仕様を機能は失わず落としていくことも含まれます。

一般的には、施工会社やCM会社が、建築主と設計事務所に提案し、建築主と設計事務所が承認します。

基本的に構造(躯体)のVEは滅多に無いです。

設計の企画段階では、杭工法の選定などで、あるかもしれませんが、確認申請が通っている段階でVE提案などしたら確認申請の出し直しになります。躯体については設計図通りに作るのみです。

下記は、内外装工事のVEについて書かせて頂きます。

建設費の見積時に注意すべき3つの事

建築主は、建設費の見積時に頭に入れて置くべき3つの事があります。

  1. 設計図(見積図面)はガレキの山である。
  2. 仕様を変更し安く施工できたのであれば、安くなった金額を還元される権利が建築主にある。
  3. 請負契約前に、出来る限りのVE提案をさせる。

と言う事です。

今回は1の、「設計図(見積図面)はガレキの山である」について書かせて頂きます。

設計事務所は、法規に即して確認申請図面を作成し、平行して、施工会社が見積できる図面を作成します。(実際の施工では設計図を元にゼネコンが詳細な施工図を書き、施工図を設計事務所が承認して、施工図を見ながら職人さんが建物が作っていきます。設計図では職人さんは建物を作れません。)

当然、多くの設計事務所は、建築主の要望を聞き、見積図面を作成しているのですが、建築主の要望以上のものが、いつの間にか図面に盛り込ませている場合も多々あります。

設計図の仕様書には、見積時に施工会社からの質疑が少ないように、メーカーの品番が書かれています。見積時に、ある程度の品番が載ってないと、施工会社は設計事務所に、いちいち質疑書を提出し、設計事務所は回答しなくてはなりません。

今時の普通の設計事務所は、施工会社からの質疑が一杯あると、面倒です。だから、面倒な事が少ないように仕様書に普通は、品番を書いています。

稀に、面倒なのか、性格なのか、細かい事を書いてくれない設計事務所も居ますが、見積期限がある限り、その設計事務所に、期待せずに、想像の成り行きで見積をしなくてはいけないことがありますが、これは、見積側も困るし、後で、金額調整が、ややこしく面倒になるので、詳細に図面を書いてくれる設計事務所に依頼する事を希望します。

あまり質疑の多い図面を書いていると、施工会社から「漫画」と馬鹿にされます。

そして見積図面のメーカー、品番の決定については、

  1. 建築主の要望や、本当に機能上必要だから書いている場合。
  2. 設計事務所のデザイン上のコダワリ。
  3. なんとなく書いている場合。
  4. メーカーの営業により書いている場合。

のパターンに大別されるでしょう。

①:建築主の要望や、本当に機能上必要だから書いている場合

建築主の要望や、どうしてもその品番で無ければならない理由があるのだから、とやかく言うつもりはありませんが、建築主に要望であっても、もっと安くて良い物があるのであれば、提案するというのが施工会社の本来の姿だと思います(当然、安くなった分は建築主に還元する前提です)。

特に外観のタイルはメーカーによって様々な種類の品番が有り、好みも有るので、出来る限り、施主の要望には沿いますが、施主様の選んだ品番が、極めて高く似たような材質で、コスト低減することが、可能な場合は、同等のタイルをタイル業者に探してきてもらって、御施主様に提案する事も良く有る事です。

②:設計事務所のデザイン上のコダワリ

②については微妙な場合です。設計事務所は、建築主の要望の有無に関わらず、費用など関係無くカッコいいものを作りたいという深層心理があります。特に「建築家」を名乗る方々は。もちろんデザインのバランスも大切ですし、建築主が、幾らになってもいいからと、お願いした設計事務所のデザインセンスに賭けパトロン的立場で任せて見るのもいいかもしれません。

建築主は何を求めるかにもよりますが、投資効果に見合わない高いがカッコイイものが、知らぬ間に仕様書に書かれている場合があることも頭の片隅に入れて置く事べきでしょう。

安くて機能性に優れカッコイイ物を作れるのがホントの建築家とは思いますが、普通の建物を建てても面白くないという心理も理解できますし、賃貸経営上、そのデザインへの投資効果が、賃料に反映されるのか否かについても頭の中の片隅に入れて判断を下すべきと思います。

港区などの高賃料帯のエリアで、入居者のニーズを満たす付加価値がデザインにあるのであれば、それを投資するべきでしょうし。

③:なんとなく書いている場合

③については、何となく本棚のカタログを取り出し、何となく品番を書いている場合です。パラパラとカタログのページを捲って、「これカッコイイから、これ。」「そんなに高くなさそうだし、こんなので見積って貰えればいいや。」と深くは考えず業務的に品番を入れていく場合です。

100%の設計事務所は、本棚に色んなカタログを置いています。デザインを決める為というのもありますが、見積図面を作る際に品番を書かなくてはいけないからです。

このカタログには、メーカーによっては単価の目安として設計上代というのが載っていますが、実際、専門工事会社が幾らでメーカーに発注し、ゼネコンが専門工事会社に幾らを払っているのか、正確に判る筈もありません。

サッシ工事とか、住宅設備工事とか、メーカーの出してる金額の掛け率40%等で納入している事は良く有る事で、素人を煙に巻いている感じがするとは思いますが、建設業の悪い慣習として、今すぐに建築するオーナー様は、諦めてください。

余談ですが、建設業のメーカーは下請専門工事会社→元請を通さない限り、CM会社以外に、設計事務所にも、実際のゼネコンが、専門工事会社に支払う原価を教える事は有りません。ゼネコンもCM会社も専門工事会社がメーカーに幾ら払っているかまでは判りません。

専門工事会社とメーカーの組あわせによって掛け目も違うでしょうし、専門工事会社が得意なメーカールートというものもあります。何となく書いているのですから、当然、実際に仕入れて施工をする専門工事会社が得意なルートのメーカー等、もっと安くて同等の機能・品質の物を探せばあるはずです。

設計事務所が以前やった物件の仕様書のデータをそのまま次の物件の仕様書に使う、あるいは、建築主の要望のあった部分を一部をいじるといった場合も多いので、ガレキの中に、コスト削減の種となる、お宝が埋まっている可能性が高いです。

④:メーカーの営業により書いている場合

「メーカーが営業してきたから」意図的に図面に盛り込ませるメーカー指定というものがあります。

メーカーは見積図面に自社製品を載せて欲しいから、設計事務所に営業をかけます。見積図面に載っているだけで、まずは、そのメーカーの品番で見積もられるのだから、ゼネコンが出す「VE提案による仕様変更」という関門をクリアできてば晴れて自社製品の売り上げに繋がります。

メーカーが営業するのは当然のことですが、晴れて売り上げに繋がれば。。。な、こともありうるわけです。

マンション系設計図面の、ほとんどが、④の何となく図面に品番を書いてる場合だと思いますが、メーカーも見積図面に品番を載せて欲しいから、カタログを頻繁に更新したりして、設計事務所と仲良くなりながら本棚にカタログが納まっていくのである。

設計図面の仕様の中でも建築主の要望や、弄る事の出来ない構造図面以外に、内外装工事でどうしても、その設計図面通りの品番でやらなくてはならない理由など滅多に存在しないです。

 

一方で、VEは、闇雲に、建設坪単価を下げれば良いと言う物では無く、エリア特製や、賃借人のターゲット属性、賃料へ与える影響など、総合的に考えて判断するべきです。

簡単な例として、港区の高級賃貸マンションを建てるのに、八王子市の木造アパートと同じ内装仕様のグレードであっては駄目ですよね。八王子市や木造アパートを馬鹿にしているのではなく、家賃や住む人が求めるものが違うのだから、そのエリアでの賃料競争では負けようがない、最高クラスのグレードの部屋にはしておくべきです。

その高いグレード同士で、安くてより良い品番があれば、取り入れていきましょうというのが、当社が推奨している、VEです。

そして同等の機能、品質を持つ、安くて良いものを探すには、細かいVE提案については専門工事会社の力を活用するのが、一番効率的でしょう。

ゼネコンでなければ提案できないVE提案もありますが、そのゼネコンも結局は、その道のプロである下請専門工事会社に値段と品質・機能を確認するのです。

ゼネコンの現場監督が、タイルの全品番を熟知してる訳でも、タイルメーカーと付き合いがある訳では無く、タイルメーカーと付き合いがあるのは、タイル専門工事会社ですから、現場監督は、タイル専門工事会社に、もっと、安くて良いタイル提案してと依頼して、その出て来たものから、サンプルを、施主や設計事務所に見せて、承認が得られれば、採用されるということです。

下請専門工事会社とは一般的には下請と言われいていますが、何十年もの間、365日その物を専門に扱うことにより事業継続してきた、その道のプロ中のプロです。ゼネコンは最終的に専門工事会社から見積を取るのだから、値段は専門工事会社の方が詳しいのは当たり前です。

彼らは聞かれれば、どのメーカーの、どの品番が幾らで仕入れられて、他のメーカーの、どの品番と同等の機能を持つのか一番知っていますし、カタログ・サンプルも直ぐに持ってきます。

ただ、その真の価値を理解されず、活用されず、発揮できずにいる場合が多いように思います。

建築主が、まず、その価値を知り、方針を示すことにより、専門工事会社は聞かれれば、素晴らしい提案する能力・価値を持っています。

どんどん提案して貰って、ゼネコンは良い提案であればそれを引き上げ、建築主は設計事務所と相談の上、品質を検討し、採用の可否を決定するのが良いと思われます。

物が溢れ競争が激しい、この世の中で、あるメーカーのある品番しか、その品質・機能を維持できないと、思われますか?
大部分は、同じ土俵で競合しているメーカーが存在するのです。

提案してもらうのは、無料ですから、建築主は、これらの事をまず頭に入れて設計事務所に対し、施工のプロであるゼネコンや専門工事会社から出たVE提案を、どんどん引き上げて欲しいという意思を伝えるべきです。(意思を伝えなければ、面倒なので設計事務所や現場監督に揉み消される場合もあります。)

そして建設関係者は面倒であっても、「誰の為に建築するのか?」を第一に考え、建築主の要望に協力するべきだと思われます。

一方、建築主は、VE提案の採否や色の決定等施工会社に協力し、早め、早めに決めるべきです。施工者側から言うと、建築主・設計事務所が、なかなか仕様を決めてくれないのは、口には出しませんが工事の迷惑以外の何物でもありません。

現場監督も人間ですから追加工事が多めに出したい気分にさせないように、建築主は施工者が気分良く仕事が出来るできるよう、結論を早めに出し、工事に協力するべきだと思います。

イメージで言うと、仕様や色が決定してくれない時の、現場監督の気持ちは、お盆休みの高速道路大渋滞40kmと同じと考えましょう。

㈱土地活用のCM方式でマンションしようが、しまいが関係なく、全ての施主様に対して世の汗水垂らして頑張っている、現場監督の為に、お伝えしたいのは、決まりさえすれば、工事の段取りと品質管理を主にしていけば良いものを、決まらないと、前に進めずに、ずっとヤキモキした気持ちになっている事を理解して頂ければ幸いです。

施工会社が、工事を進捗させやすいように、施主が対応するのが施主としての責務です。

 

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